2003年04月13日
トーノZEROアニメ論アニメにおける3DCG活用批判 total 3587 count

第2回 歴史を振り返る~ゴルゴとレンズマン

Written By: トーノZERO連絡先

 3DCGが、いわゆる日本のアニメの最初に入ってきたのは、おそらく1983年の劇場用長編アニメ「ゴルゴ13」ではないかと思います。何しろ、テレビで1回見たきりなので、記憶も定かではありませんが。コンピュータグラフィックというキーワードを押し出して宣伝した割に、3DCGはヘリコプターが飛行するほんの僅かなシーン等にしか使われておらず、しかも、その前後の手描きアニメーションのシーンの方が遥かに迫力を感じさせられました。全部手で描いても、まったく問題ない映画だったと思います。むしろ、その方がストレートにアニメ映画として見て貰える分だけ良かったかも知れません。

 まあ、そのような形で始まった以上、アニメから見た3DCGの印象が良くないものであったのはやむを得ないでしょう。また、3DCGはメカや建物の描写に向き、人物は手描きの方が良いという価値観の原点をここに見ることもできるかもしれません。この映画では、人物ではなくヘリが描写されていました。

 ゴルゴでずっこけた感があるアニメにおける3DCGの利用ですが、そこで終わったりはしないところが立派です。記憶をさぐると、おそらく「ゴルゴ13」の次に3DCGを使ったのが、1984年の劇場用長編アニメ「SF新世紀レンズマン」です。3DCGで印象に残っているのは、宇宙戦闘機が急降下するシーンです。これは、距離感とスピード感を感じさせて、なかなか良い感じのシーンだったように記憶します。しかし、手描きの宇宙船の方が、3DCGの宇宙船よりも、はるかに重厚感があったというあたり、必ずしも3DCGを手放しで受け入れられるような状況ではありませんでした。

 これらの時代、3DCGとは、ただ単に3DCGを実現するだけで一大事業であったと言えます。技術的にも未熟であり、しかも、コンピュータの処理能力が圧倒的に低く、1枚の3DCG画像を得るだけでも一苦労であるのに、動画となれば、更に桁違いの時間とコストを食います。完成した後でちょっと出来の悪い画像だなと思っても、今更手直しができないぐらい圧倒的な時間とコストが掛かっていたと思います。それを考えれば、これらの映画で使われた3DCGは、技術的なチャレンジであって、表現として評価できる段階に達していなかったのかもしれません。しかし、アニメ関係者から見た3DCGの第1印象を、これらの映画が印象づけた可能性は十分にあり得そうです。

 それから、もう1つ、補足しておく話題があります。1983年にテレビアニメとして制作された「子鹿物語」というものがあって、これもコンピュータで制作されたエピソードを含みます。こちらの方は、どうやら3Dではなく、2Dの画像をコンピュータで扱ったようです (現在ではおそらく当たり前)。しかし、1エピソードすべてのコンピュータで処理したというエピソードを見た知人 (そのあと代々木アニメーション学院に行った絵描き系) が、「絵が狂っている。やっぱりコンピュータでアニメは無理なんだ」と言っていた記憶があります。しかし、絵が狂っているのは、人間のアニメータの描いた原画の狂いの問題であって、コンピュータの問題ではないと言えます。具体的にコンピュータが何をしてくれるかも、まだまだ分からない時代だったと言えます。その状況で、ゴルゴやレンズマンの与えた印象は、深く関係者に根付いた可能性は考えられると思います。


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